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林 真理子 『下流の宴』
林真理子の小説『下流の宴』を読んだ。
中流家庭の主婦として誇りを持つ主人公の由美子の息子が高校を中退、フリーターの娘、珠緒と結婚したいといい、「中流から下流に落ちてしまう」と恐怖を覚え、断固阻止を決意。すると馬鹿にされた珠緒は『そんなに医者が偉いなら、私が医者になる!』と猛勉強を開始。一方、由美子の娘は高学歴のお金を稼ぐ若い男性と結婚することだけに努力を重ね・・・。といった女性の闘いと格差社会を描いた小説。
彼女の小説を久しぶりに読んですごく引き込まれたけど、読んだ後,『胸がざわざわし、後味が悪い』ような気になった。
暗い話ではなかったが、やたらリアルな気がしたからかも知れない。
女性のならではの「いやらしい見栄」とか「女の意地」とか、「人にいう事は決してないが、心の奥にある本能的な黒い部分」をびっくりするくらいうまく表現するので、ちょっと疲れる(苦笑)。
そう、『疲れる』。。。いやな疲れではないが、この感覚は林真理子さんの小説を読んだ時にわりと感じる。
初めて彼女の小説を読んだ時、心の中を覗かれたようでびっくりした。
私はさばさばした方だと思うが、それでも私の中に少しある、女性ならではのどろどろとした部分がさらけ出されたような気になり、それが疲れる気がする理由だろう。
年収や、勤め先、学歴、家柄、親の職業なんて人を見るときに考えた事がない私ですが、それってこの小説に出てくる、フリーターの珠緒と同じ位置の人(笑)
一方の由美子の娘は高学歴のお金をじゃんじゃん稼ぐ男性と結婚するために、男性を見る目線が全然違う。
就職が決まっても地味な会社で人形町という場所も気に入らず、結婚相手を探す為だけに就職を蹴って、派遣社員として華やかな会社に勤めるといった筋金入りのセレブ希望。
生きるステージが違うと考え方も違うのでしょうね。
印象に残ったのは、珠緒が学生カバンを選ぶ際に、皮のカバンと合皮のカバンがあり、合皮の倍もする皮のカバンを欲しいと言ったら、珠緒のお母さんが、『通学カバンは3年使うだけで用が足りればいい。今、そんなことにこだわると、どうでもいい違いのために、バイ働かなきゃいけない生き方すんのよ、それでもいいのって』
なるほど、「少しの違いか・・」そんな考え方もあるのね、と納得した。
はやり、人と比べない事が一番の幸せだと思ったのであった。